アジアには、国が多い。
東アジアは、日本、韓国、中国(大陸、香港、台湾)くらいだが、ASEANは10か国ある。
更に、インド、スリランカ等まで含めると、20を超える。
会社によっては、ここにオーストラリアを含めることもある。アジアパシフィックという。
そのため、アジア地域の計数管理対象もまた、多くなる。
特に、複数の事業や商品カテゴリーを抱える企業にとっては、アジア地域での予算や実績の全体像をつかむのは難しい。
それでは、どうやって、パッと見て分かるようにするか。
一番簡単、かつ多くの会社で採用されているのが、商品別×国別マトリクスである。
まず、縦軸に商品・事業を、横軸に国を並べる。
このマス目に、実績や予算、対前年比等を書き込んでいく。
時には、赤字部分や対前年比マイナス部分に色を塗ってみる。
こうすると、どの商品がどの地域で調子が良いのか/悪いのかが一目瞭然である。
この方法は非常に分かりやすい。
分かりやすいが、分かりやすいだけに、落とし穴もある。
それは、各国が「同じような国」に見えてしまう、ということだ。
アジア地域責任者は、当然ながら、自社の事業や商品について熟知している。
そのため、文字を見れば、その背景や具体的内容が自然に頭に浮かぶ。
一方で、国についてはどうか?
その国の市場の大きさ、経済水準は言うに及ばず、消費者の様子、流通チャネルの発展状況から、競合企業の動向等まで。
アジア20数か国全てを熟知している人は、そうお目にかかれない。
人は、どうしても、自分が想像しやすい方に引っ張られる。
そのため、このマトリクスを見ていると、いつのまにか、自社の売上高の大きさや、対前年比成長率の数字で、一喜一憂してしまう。
「各国市場の成長率と比べて、自社は成長できているのか?」
「シェアは拡大したのか?」
といった視点は置き去りになる。
そして例えば、いつのまにか、中国事業とベトナム事業が同じ売上規模であることに違和感が無くなっていく。両者を同列に語りはじめる。
欧米系競合があまり関心を持たない小さな市場でしか勝てていない、といった「不都合な真実」が目に入らなくなる…。
計数管理に使う表や図は、大げさに言えば、使用者の「世界」の捉え方を方向付ける。
近年、ダッシュボード等が流行している。
そこから「見えるもの」だけでなく、「見えないもの」は何か?
クリアな視界を得る代わりに、何が見えなくなっているのか?
時には、そのような視点も持っていたい。
このシリーズでは、oririのコンサルタントが、日々のプロジェクトの中で書きつけた「気づき」を、思考のプロセスごと、できるだけそのままの形でお届けします。コンサルタントはどのような視点で見つめ、思考しているのか、資料やプレゼンテーションに加工される前の「気づき」という考えの種から、「あたらしさ」のヒントや「らしさ」を見つめなおすきっかけが見つかるかもしれません。
ご参考)経営を、「らしく、あたらしく」。Originality開発の方法論